アリゾナの乾いた風が吹き抜けるなか、練習施設の一角に設けられた特設エリアには無数のカメラが列をなした。世界が息を呑んで見守るなか、本人が明かしたのは元バスケットボール選手の田中真美子さんとの歩みだった。派手さを好まず、地に足のついた価値観を共有できるパートナー。大谷自身が「一緒にいて落ち着く、ずっと自然体でいられる人」と穏やかに口にしたその瞬間、過度な詮索を試みていたメディアの喧騒は心地よい納得感へと変わっていった。
二人の接点は、日本にあるトレーニング施設でのすれ違いから始まったという。短いオフの限られた時間のなかで、共通の知人を介して言葉を交わし、距離を縮めていった。外食すらままならない徹底したプライバシー管理下、二人が育んだのは電話やオンライン越しでの何気ない会話だった。「同じ空間にいながら、それぞれが別の作業をしていても苦にならない」。そんな些細な日常の波長の一致こそが、グラウンドで極限のプレッシャーと戦い続ける男にとって、何物にも代えがたい安らぎとなったに違いない。