順風満帆に見えるこのプロジェクトだが、届いた当初の職員室は前例のない事態に揺れていた。右利き用2個、左利き用1個という絶妙な構成。全校児童数百人に対してわずか3個という限られたリソースを、どう公平に配分するか。教員たちの頭を悩ませたのは、紛失や破損のリスクだけではなかった。
「特定の子ばかりが独占しないか」「野球経験者と未経験者の温度差をどう埋めるか」。連日の職員会議で議論が交わされた。結果として生まれたのは、学年ごとのローテーション制度や、じゃんけん大会、さらには委員会活動としての「大谷グローブ係」の設置といった、現場発の柔軟なアイデアだった。
スポーツナビをはじめとする各種メディアの速報に刺激されつつ、現場の先生たちは手探りでルールを構築していった。現在では、左利き用のグローブが普段スポーツに消極的だった児童の背中を押すきっかけになるなど、インクルーシブな体育教育の実践例としても高く評価されている。