Amazon Kindleをはじめとする電子書籍端末やサブスクリプションサービスが広く普及した現在、出版・書店業界を取り巻く環境は激変の渦中にある。スマートフォン一つで無数の本を即座にダウンロードできる時代に、人々がわざわざ実店舗の本屋に足を運ぶ理由は何なのだろうか。
現場を歩いて見えてきたのは、「偶発的な出会い(セレンディピティ)」の価値だ。アルゴリズムが弾き出す「おすすめ」は過去の閲覧履歴に基づくが、書店の棚を歩く行為は、全く思いも寄らなかったジャンルや知性に触れる機会をもたらす。紙のインクの匂い、装丁の質感、ページを繰る音。五感を通じて本を体験する価値は、どれほどデジタル技術が進化しても代替できない。大船の書店群が見せる賑わいは、物理的な本屋が持つ圧倒的な存在意義を如実に物語っている。