大船の夜を語る上で欠かせないのが、かつてこの地に存在した松竹株式会社の「松竹大船撮影所」である。昭和から平成にかけて数々の名作映画やドラマがここで生まれ、名優やスタッフたちが撮影の合間や仕事終わりに夜な夜な集ったのが、駅東口に今も賑わいを見せる大船仲通商店街周辺だ。映画人たちの肥えた舌を満足させるために磨かれた味と、ざっくばらんなもてなしの心。それが、大船の飲食業全体の底上げにつながったという歴史的背景がある。
現在でもその遺伝子は色濃く残る。アーケードや狭い路地に足を踏み入れると、昭和の面影を残す惣菜店や鮮魚店と並んで、個性豊かな酒場が所狭しと軒を連ねている。単に酒を飲む場所ではなく、店主と客、あるいは客同士が言葉を交わし、一日の疲れを癒やす「地域のコミュニティ」としての機能を果たしている点が、この街ならではの魅力と言えるだろう。