当時のデリバリー弁当がなぜ生徒たちから強烈な拒絶反応を受けたのか。そこには、学校給食の安全基準と美味しさのトレードオフという、配送方式ならではの構造的な問題が存在していました。
最大の問題は徹底した衛生管理による「冷え切った温度」でした。民間の調理工場から配送する際、食中毒菌の繁殖を防ぐ文部科学省の基準に則り、調理後の食材を10度以下まで急速冷却して保冷配送するルールが適用されていたためです。
その結果、教室に届く頃には以下のような状態に陥っていました。
・揚げ物の衣が油でギトギトになり、冷たく硬い
・ご飯のデンプンが冷えてパサつき、喉を通りにくい
・汁物がなく、水分が失われたおかずばかりで食が進まない
・冬場でもおかずが冷え切っており、身体が温まらない
成長期の中学生にとって、冷たいプラスチック弁当箱に詰められた食事は決して魅力的なものではありませんでした。味付けそのものの問題以上に、「適温で食べられない」という物理的制約が、生徒たちの不満を極限まで高めていたのです。