1972年の創業当時、日本におけるフランス料理といえば、高級ホテルのグランメゾンで味わう敷居の高い洋食というイメージが主流だった。その時代に「もっと気軽に、日常的にフランスの食卓を楽しんでほしい」という情熱から誕生したのが同店である。
階段を一段降りるごとに、街の喧騒が遠のいていく。赤と白のチェック柄のテーブルクロス、使い込まれた飴色の木製家具、そして壁を埋め尽くすポスターやヴィンテージの小物たち。過度な装飾を排し、あえてフランスの庶民的な「食堂(ビストロ)」の空気を愚直なまでに守り続けてきた姿勢こそが、半世紀を経た今も色あせない魅力を放っている。