根拠のない偏見が存在する一方で、特定のエリアにおいて軽犯罪やトラブルが実際に起こりやすい構造的要因が存在することも冷厳な事実です。都市社会学および環境犯罪学の視点から街を観察すると、治安の良し悪しを分ける要素は明確な法則性を持っています。
犯罪学における基本原則に「CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design:防犯環境設計)」があります。犯罪が起きやすい場所には、共通して以下の3つの欠如が見られます。
- 監視性の欠如:街灯の照度が低く、道路に面した建物の窓が塞がれているなど、周囲からの「自然な監視の目」が届かない死角。
- 領域性の希薄化:管理されていない空き地、ゴミの不法投棄、落書き、違法駐車が放置され、「この場所は誰も管理・関心を持っていない」というシグナルを発している状態(割れ窓理論の典型例)。
- アクセス制御の甘さ:路地が複雑に入り組み、逃走経路が無数にある一方で、防犯カメラの死角となっている入り組んだ木造密集地域。
さらに、歓楽街特有の「匿名性の高さ」も治安に決定的な影響を与えます。居住者同士の顔が見えない繁華街では、規範意識が低下しやすく、泥酔者同士のトラブルや客引きとの金銭トラブルが構造的に発生しやすくなります。街の治安が悪化する根本的な理由は、住んでいる人々の属性ではなく、都市空間の物理的・制度的設計に隙があることに起因しているのです。