ネット上で「悪の反対語」が議論される際、必ず引用されるのが「正義の反対は悪ではなく、また別の正義である」という名言です。この言葉は、善悪の単純な対立に疑問を投げかける至言として広く知られています。
この名言に関して、「クレヨンしんちゃん」の映画内で野原ひろしが語ったセリフであるという噂がSNSを中心に拡散されました。しかし、作品内の脚本をいくら調査しても、ひろしがこのセリフを発した公式の記録は存在しません。ファンの創作やネットミームがいつの間にか拡散し、国民的キャラクターの言葉として定着してしまったのが実情です。
このフレーズのルーツには諸説あります。アイディアファクトリーのシミュレーションRPG『ブレイジングソウルズ』や、スクウェアの『ファイナルファンタジータクティクス』など、思想の対立を描くゲーム作品の中で類似のテーマが語られてきたほか、作家のアガサ・クリスティや思想家たちの著作にも通底する概念が存在します。
なぜこの言葉がこれほど強い説得力を持つのか。それは、「悪を為そうとして動く人間」よりも、「自分自身の正義を信じ切った人間」のほうが、他者を容赦なく攻撃し、より凄惨な争いを生み出すという現実の歴史的教訓を突いているからです。