競技の第一線を退いてから長い年月が流れた。しかし、彼女のスケート靴が脱がされることはなかった。近年、ドイツ・オーベルストドルフなどで開催される国際アダルトフィギュアスケート大会のリンクに彼女が姿を現すと、会場の雰囲気は一変する。
50代にして見せる滑らかなスケーティング、そして衰えを知らない躍動感。かつての世界女王が、年齢を重ねた愛好家たちと同じリンクに立ち、純粋に滑る喜びを噛みしめるように笑みを浮かべる。その光景は、結果やメダルの色だけがスポーツの価値ではないことを雄弁に物語っている。スタンディングオベーションで包まれる客席の光景は、彼女が今なお世界中で愛され続ける特別な存在であることを証明している。