日本のテレビドラマという表現領域において、坂元裕二の名は常に特別な響きを持つ。日常の些細な台詞の掛け合いから人間の残酷さと愛おしさを同時にあぶり出す彼の筆致は、今期の新作でも極めて冴え渡っている。舞台となるのはフジテレビジョンのドラマ枠。派手な事件や過剰な演出に頼らず、登場人物たちの「言い淀み」や「沈黙」そのものをドラマの推進力に変えていく手腕は圧巻だ。
ファミレスの片隅で交わされる他愛のない世間話が、気付けば登場人物たちの人生の急所を突いている。善悪の二元論では割り切れない現代社会の生きづらさを、決して説教臭くならずに掬い上げる脚本。長年培われた制作チームとの信頼関係が、役者の細やかな表情の揺れを逃さず捉え、視聴者の心へ静かに爪痕を残していく。