彼の役者としてのターニングポイントを語る上で欠かせないのが、重厚な名作として知られる舞台「野鴨-Vildanden-」への出演だ。古典戯曲独特の重厚な台詞回しや、目まぐるしく変化する心理描写が求められるこの作品において、圧倒的な存在感を提示してみせた。劇場の空間を支配する緊迫感の中、生の舞台演劇だからこそ生じるプレッシャーを全身で受け止め、見事に自分のものへと昇華させたのだ。
観客の目線が一本の線となって注がれるステージ上。逃げ場のない極限状態で培われた集中力は、現在の彼にとって大きな財産となっている。劇評家からも「内面の葛藤を全身で表現できる数少ない若い演技者」と賞賛された経験が、彼のバックボーンを強固なものにした。