千年以上も昔、日本人が抱いていた「いとあはれ」や「いとおかし」の感性は、現代の「エモい」「かわいい」に驚くほど近い。随筆『枕草子』を著した清少納言は、まさに日本最古のトレンドセッターだ。「春はあけぼの」から始まる有名な冒頭は、早朝の山ぎわが少しずつ白んでいく情景を、みずみずしい感性で切り取っている。
彼女が日常のあちこちに発見した小さく可憐なものへの愛着は、日本固有の美意識である大和言葉の礎となった。「ほのぼの」「うららか」「かすみ」といった言葉には、角のない柔らかい響きがある。古代の知恵が詰まった言葉を現代の文脈に少し取り入れるだけで、文章に知的で可憐な表情が生まれる。