一般的な焼き鳥屋のカウンターに座れば、職人が炭火の上で串を1本ずつ丁寧に返す光景を思い浮かべるでしょう。しかし、今治の焼き鳥店で主役を務めるのは、カウンター越しに鎮座する分厚い鉄板と取っ手付きの鉄の重し(コテ)です。
この独自の調理スタイルが確立された背景には、今治の産業構造と気質が深く関係しています。世界的な海事都市として発展した今治には、造船所や海運業、タオル製造に従事する職人や商人が集まっていました。仕事終わりに暖簾をくぐる彼らは、何よりも「早く旨い酒と肴にありつきたい」と願う、気風の良いせっかちな気質を持っていたと伝えられています。
炭火で生の鶏肉を串ごとじっくり焼いていては、注文から提供までどうしても10分から15分ほどかかります。そこで考案されたのが、傾斜をつけた高温の鉄板に鶏肉を広げ、上から重量のあるコテでギューッと押し付ける調理法でした。上下から同時に熱を加えることで、通常なら焼き上がりに時間のかかる鶏皮も、わずか2〜3分という圧倒的なスピードで香ばしく焼き上げることが可能になったのです。