この特異な関係性を理解する鍵は、『古事記』や『日本書紀』に記された「国譲り神話」にあります。葦原中国(日本の国土)を治めていた大国主大神は、高天原の天照大御神からの要請を受け入れ、自らの支配権を天孫(皇室の祖先)へと平和裏に譲り渡しました。
その際、大国主大神が国譲りの条件として提示したのが次の要求でした。「天の御子が住まう宮殿と同じ壮大な宮を造営してくれるならば、私は身を隠して静かに見守ろう」。これによって創建されたのが、現在の出雲大社の起源とされています。
大国主大神は自ら表舞台を退き、皇室に国土の統治権を委ねました。天皇家側もまた、大国主大神の偉大なる功績を称え、決してその聖域を侵さないことを約束したのです。この神話上の盟約こそが、天皇が直接出雲に乗り込まず、使者を立てて丁重に祀るという千数百年にわたる慣例の根底にあります。