沖縄の地に足を踏み入れたとき、彼の眼前に広がっていたのは単なる高齢化社会の風景ではなかった。夜な夜なうなされ、原因不明の体調不良や突然のパニックに怯える老人たち。彼らの症状の奥底には、1945年の沖縄戦で目撃した惨劇が鮮明なまま焼き付いていたのである。
著書『沖縄戦PTSDとトラウマ』や『消えない心の傷』で明かされた臨床例は、専門家たちを絶句させた。戦後70年、80年が経過してなお、脳の記憶領域に居座り続ける戦争の影。それまで「単なる老衰」や「認知症」と片付けられていた症状の裏に、根深いPTSDが潜んでいることを彼は見抜いたのだ。