表舞台では「核抜き・本土並み」「国民の費用負担なし」と華々しく宣伝された沖縄返還ですが、その裏側には国民の目を欺く重大な密約が張り巡らされていました。これらは後に、毎日新聞記者・西山太吉氏によるスクープや、後年の米公文書公開、元外務省条約局長ら関係者の証言によって事実であったことが白日の下にさらされています。
最大の密約の一つが、米軍用地の原状回復補償費の肩代わりです。本来は米国側が支払うべき400万ドルの原状回復費を、日本政府が極秘裏に拠出・補填する取り決めが交わされていました。さらに、米軍放送局(FEN)の移転費用や基地関連施設の買い上げなど、表向きの返還協定に記された金額を遥かに上回る総額数億ドルに及ぶ財政負担を日本側が背負う構造となっていました。
さらに深刻なのが核兵器の再持ち込みに関する密約です。佐藤首相とニクソン大統領の間で交わされた秘密合意文書には、「極めて重大な緊急事態に際しては、米国政府は日本政府との事前協議を経て、核兵器を再び持ち込むことができる」という趣旨の条項が含まれていました。非核三原則を掲げてノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作氏の功績の影には、平和主義の理念を根底から揺るがす外交的妥協が潜んでいたのです。