事件の中心にいたのは、北京電視台(BTV)の臨時スタッフであった記者・訾北佳(ツー・ベイジア)だ。彼は同局の生活情報番組『透明度』において、視聴者を驚愕させるインパクトのある映像を追い求めるあまり、禁断の領域へと踏み込んだ。視聴率低迷の焦りと功名心から、訾北佳は自ら筋書きを書き上げ、演技指導まで行って「ダンボール入りの肉まん」が製造される現場をカメラに収めたのである。
『透明度』という番組名は、期せずして皮肉な響きを持つこととなった。本来ならば社会の暗部を透明化し、正義を追求すべき報道番組が、自ら暗闇を作り出して視聴者を欺いていたからだ。訾北佳の逮捕後、北京電視台は公式に謝罪し、番組の放送打ち切りを発表。一個人の暴走にとどまらず、チェック機能を失った番組制作体制そのものが、メディア・報道業界全体の信頼を損なう致命的な一打となった。