熱湯コマーシャルを語る上で欠かせないもう一つの疑問が、「熱湯風呂はやらせで、実はぬるかったのではないか」という湯加減の疑惑です。この疑問に終止符を打つのが、稀代のリアクション芸を確立したダチョウ倶楽部(肥後克広、寺門ジモン、上島竜兵)と、番組の裏方スタッフたちの詳細な証言です。
ダチョウ倶楽部の上島竜兵氏は生前、自著やトーク番組で「熱湯風呂の温度は絶対に嘘をつかない」と断言していました。実際に設定されていた温度は、概ね48度から51度の範囲でした。一般的な家庭の風呂が40〜42度であることを考えると、48度以上の湯は「熱い」を通り越し、肌に触れた瞬間に針で刺されたような激痛が走る危険領域です。
湯船の温度管理は、専属の「湯沸かし職人」とも呼べる大道具スタッフが担当していました。スタジオ脇に設置された大型ボイラーから蒸気を送り込み、棒温度計で1度単位の微調整を繰り返していたのです。なぜなら、53度を超えると数秒で低温火傷から本格的な火傷事故に直結し、逆に45度を下回ると芸人がどれだけ大げさに騒いでも視聴者に「ぬるさ」が見透かされてしまうからです。
「押すなよ!絶対に押すなよ!」という上島氏の不朽のギャグは、単なる台本上の茶番ではなく、「本当に熱いからこそ、完璧なタイミングで落ちなければ大怪我をする」という極限の緊張感から生まれた職人芸でした。ダチョウ倶楽部のメンバーは、熱湯に入る直前に水で手足の感覚を麻痺させたり、湯船の底に足をつかずに縁を掴んで浮くことで滞留時間を稼ぐなど、高度な身体技術を駆使してあの笑いを生み出していました。
一方で、後年のバラエティ番組において小島よしお氏が熱湯風呂に入った際、スタッフの手違いで湯が十分に温まっておらず、本人が思わず「全然熱くない」と漏らしてしまった放送事故が話題となったことがあります。この珍事は「熱湯風呂=ぬるい」という疑念を再燃させましたが、これは後年の模倣企画でのオペレーションミスに過ぎず、『スーパージョッキー』全盛期の熱湯風呂は間違いなく本物の熱湯であったことが関係者の証言から実証されています。