寿司の基本である酢飯(シャリ)は、一般的に米酢を用いた透明感のある白色をしています。これに対し、赤みを帯びた褐色に染まっている酢飯が「赤シャリ」です。着色料などで色を付けているわけではなく、合わせ酢に使われる「赤酢(酒粕酢)」そのものの天然の色素が米粒を美しく染め上げています。
赤シャリの骨格を形作る赤酢とは、日本酒を醸造する過程で生まれる「酒粕(さけかす)」を主原料とする醸造酢です。一般的な米酢が精米された米と麹から数か月程度で作られるのに対し、赤酢は圧搾後の酒粕を蔵の中で3年から5年以上もの歳月をかけてじっくり貯蔵・熟成させます。この熟成期間中に、酒粕に含まれるタンパク質がアミノ酸へと分解され、糖分とアミノ酸がメイラード反応(褐変反応)を起こすことで、漆黒に近い深い褐色へと変化していきます。
この長期熟成を経た粕酢を使って仕立てた赤シャリは、白シャリと比較して「ツンとくる刺激的な酸味が極めて少なく、奥深いコクとうま味が圧倒的に強い」という際立った特徴を持ちます。白酢の主成分である酢酸のシャープな酸味に比べ、赤酢には天然のグルタミン酸をはじめとする多様なアミノ酸や有機酸が凝縮されています。そのため、砂糖を大量に加えなくても米の甘みと酢のまろやかさが見事に調和し、口に含んだ瞬間に豊かな余韻が広がるのです。