企業が日常業務の中で赤伝を発行する理由は、単なる入力ミスにとどまりません。商取引の実態に応じて、主に以下のようなシチュエーションで発生します。
- 売上戻りと返品処理:納品した商品に破損や仕様違いがあり、顧客から商品が送り返されてきた場合。
- 数量や単価の誤請求:発注書の条件と異なる単価で請求書を発行してしまい、正しい金額へ修正する場合。
- 売上値引き・リベートの発生:取引条件の達成に伴い、後日値引きを実施して請求金額から差し引く場合。
- 二重計上・取引のキャンセル:同一の発注を重複して計上してしまった、または納品前に契約が白紙撤回された場合。
赤伝の仕訳方法:マイナス記帳と反対仕訳の違い
会計実務における赤伝の仕訳方法には、主に「マイナス仕訳」と「反対仕訳(逆仕訳)」の2つのアプローチが存在します。会計方針や導入している財務システムの仕様によって選択されます。
例えば、掛売上で計上した商品10万円分について、後日全品が返品されたケースを考えます。
【元の黒伝(当初の売上計上)】
(借方)売掛金 100,000円 /(貸方)売上高 100,000円
【アプローチA:反対仕訳による赤伝処理】
元の仕訳の借方・貸方を完全に反転させて相殺します。
(借方)売上高(または売上戻り高) 100,000円 /(貸方)売掛金 100,000円
【アプローチB:マイナス仕訳(本来の赤伝処理)】
借方・貸方の勘定科目はそのままで、金額に「△」や「−」を付与します。
(借方)売掛金 △100,000円 /(貸方)売上高 △100,000円
実務における赤伝票の書き方と処理手順
手書き伝票や社内ワークフロー上で赤伝票の書き方を実践する際は、元の伝票との紐付けを明確にすることが最優先事項です。
- 取消対象の黒伝情報の明記:対象となる「元の伝票日付」「伝票番号」「取引先コード」を必ず記載・選択します。
- 金額のマイナス表記:金額欄に赤字で記載するか、頭に「△」または「−」を付記します。
- 赤伝発行理由の記載:摘要欄に「2026年〇月〇日売上分 品番〇〇 破損による返品相殺」など、客観的な発生事由を簡潔に残します。
- 承認フローと取引先送付:社内の経理承認を得た後、必要に応じて取引先へ修正明細書やクレジットノートを送付します。