白血病の治療は、時に命のリスクを伴う骨髄移植(造血幹細胞移植)や強力な化学療法を必要とする。医療チームが最も頭を悩ませたのは、病魔の克服とアスリートとしての復帰という二つの難題をいかに両立させるかだった。
治療の合間、無菌室の中で行われたのは、わずかな体力を維持するためのリハビリテーションである。心肺機能を落とさないための微弱なストレッチやエルゴメーター運動。血液内科の医師と理学療法士は、感染リスクを極限まで排除した無菌室内に器具を持ち込み、血液検査の数値をリアルタイムで監視しながら運動強度を管理した。医療チームが下した一つひとつの果断な決断が、後に「奇跡」と称される早期復帰の地盤を作り上げたのである。