遅発性ジスキネジアが患者に与える打撃は、身体的な動かしづらさだけにとどまりません。患者コミュニティや精神保健福祉の相談現場では、見た目の変化による自尊心の低下と、それに伴う社会参加の断念が深刻な課題として報告されています。
ある患者手記には、「会議中や電車の中で勝手に口がもぐもぐと動いてしまい、周囲から不審な目で見られていると感じて外出恐怖に陥った。精神疾患の症状自体は薬で落ち着いていたのに、副作用のせいで仕事を辞めざるを得なくなった」という苦痛が吐露されています。周囲からの「落ち着きがない」「変な表情をしている」といった誤解や好奇の視線は、当事者を激しい孤立感へと追い込みます。
さらに家族関係においても、無意識の不随意運動を「わざとやっているのではないか」「行儀が悪い」と誤認して注意してしまい、家庭内の摩擦が激化するケースが後を絶ちません。この疾患が本人の意思とは一切関係のない神経伝達の異常であることを、家族や周囲が正しく理解する環境整備が求められています。