ミックスジュースを語る上で欠かせないのが、関西、とりわけ大阪の喫茶店文化における独自の発展史です。そのルーツは昭和23年(1948年)、大阪・新世界に創業した果物店(のちの喫茶店)「千成屋珈琲」にあります。初代店主・恒川一郎氏の自著や当時の取材記録によると、夏場の暑さで熟れすぎてしまい、店頭で売り物にならなくなった高級果物を「なんとか美味しく生かせないか」と試行錯誤した末に考案されたのが始まりとされています。
果実を細かく刻み、牛乳やクラッシュアイスとともにミキサーにかけて提供したところ、労働者や買い物客の間で爆発的な人気を博しました。これは単なる偶然の産物ではなく、食材を一筋たりとも無駄にしない大阪商人の「始末の精神(もったいない精神)」と、美味いものを安く提供するという徹底した顧客志向が結実した食のイノベーションでした。
関東で「ミックスジュース」といえば、複数の生搾り柑橘やリンゴをブレンドした透明感のあるサラリとしたジュースを指すケースが一般的でした。これに対し、関西風は乳製品と固形感のある果肉、氷を一体化させた「飲むスイーツ」とも呼ぶべき重厚な質感を持っています。この関西スタイルが全国の純喫茶へと波及し、今日私たちが親しむミックスジュースの原型となりました。