適用される罪名の性格にも明確な棲み分けがなされていました。懲役刑が科されるのは、殺人罪、強盗罪、窃盗罪、詐欺罪など、道徳的・倫理的な非難に値する「破廉恥罪」や故意の犯罪が中心です。
対照的に、禁錮刑は主に悪意や故意のない過失犯、あるいは信念に基づく「非破廉恥罪」に対して適用されてきました。身近な例では、自動車事故による過失運転致死傷罪が挙げられます。重大な過失であっても「人を傷つけよう」という故意がない事案では、禁錮刑が選択されるケースが目立ちました。また歴史的には、思想信条に基づく内乱罪や反乱罪などの政治犯に対し、人格を尊重して作業義務を免除する趣旨で禁錮刑が科されてきた背景があります。
一般によく囁かれる誤解として「禁錮刑なら前科がつかないのではないか」という言説がありますが、これは事実無根です。前科の影響という観点において、両者に優劣はありません。懲役刑であっても禁錮刑であっても、有罪判決が確定した時点で検察庁の前科調書に生涯記録されます。裁判で執行猶予が付いた場合でも同様に前科としてカウントされ、弁護士や公務員、医師などの国家資格における欠格事由に該当する点も共通しています。