行政の動きが緩慢な一方で、民間企業は市場の防衛に躍起だ。大手コンビニエンスストアの棚を観察すると、保存料(ソルビン酸)や合成着色料を「不使用」とする弁当やおにぎりが標準化している。
しかし、ここに現代の食品マーケティングの落とし穴がある。保存料を抜いた穴を埋めるために、「pH調整剤」や「グリシン」が大量に添加され、風味の低下を補うために「酵母エキス」や「たん白加水分解物」といった濃厚なうま味成分が投入される。これらは法律上の指定添加物に当たらない、あるいは一括名表示が許されているため、パッケージ表面には堂々と「合成保存料・着色料無添加」の文字が躍る。
消費者庁が2026年に策定した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」により、「完全無添加」のような誇大表現の取り締まりは強化された。しかし、実質的な味付けや保存技術の代替にすぎない製品が、あたかも「ナチュラルで身体に優しい完全食」であるかのように錯覚させる手法は、形を変えて巧妙に生き残り続けている。