ファンタジーや異世界転生モノが百花繚乱の時代にあって、今年の受賞作の中でひときわ異彩を放ったのは、現代社会の歪みや人間のドロドロとした内面をリアルに描いた社会派ドラマだった。徹底的な取材に基づいたディテールと、剥き出しの感情がぶつかり合うセリフ回しは、審査員たちを沈黙させるほどの説得力を持っていたという。
「嘘のない感情を描くこと」。それが、どれほど奇抜な設定よりも読者の心に深く刺さるということを、受賞作は見事に証明してみせた。フィクションでありながら、まるで隣の部屋で起きているかのような生々しさが、そこにはあった。