倍速視聴や要約サービスの普及によって、効率的に知識を得ることが正義とされた時代があった。しかし、効率の追求は結果として、私たちの思考を浅瀬に留まらせることになった。一万円で届く5〜6冊の本は、決してすぐに読めるものばかりではない。
時には難解で、時には一見退屈な描写が続く小説も含まれる。だが、その無駄とも思える行間を彷徨う時間こそが、脳の使われていなかった領域を刺激する。タイパ(タイムパフォーマンス)という呪縛から逃れ、あえて遠回りをする贅沢。現代において、これほど贅沢な時間の使い方は他にないだろう。