連続テレビ小説『マッサン』では、主要な登場人物の多くに明確な実在モデルが存在します。ドラマのキャラクター設定と実際の人物像を比較すると、脚本がいかに史実のエッセンスを巧みに抽出しつつ、エンターテインメントとして昇華させていたかが見えてきます。
主人公・亀山政春のモデルとなった竹鶴政孝は、広島県竹原市の造り酒屋に生まれ、愚直なまでに本物のスコッチウイスキー造りにこだわった「頑固一徹」な技術者でした。ドラマで玉山鉄二さんが演じたコミカルで情に厚いマッサンの姿には、政孝本人が持っていた人間味や周囲を惹きつける熱量が投影されています。
ヒロイン・エリーのモデルである竹鶴リタは、異国情緒あふれる天真爛漫な女性として描かれました。実際の彼女は非常に聡明かつ芯の強いスコットランド貴婦人で、日本文化や日本語を猛勉強し、関西弁まで流暢に操るほど完璧に日本の生活に適応した努力の人でした。
堤真一さんが圧倒的な存在感で演じた鴨居欣次郎のモデルは、サントリーの前身である寿屋の創業者・鳥井信治郎です。「やってみなはれ」の名言通り、抜群の商才と先見の明で日本の洋酒文化を切り拓いた人物であり、職人気質の政孝とは対照的な稀代の事業家として描かれました。