事件の直接的な元凶となったのは、最強クラスの毒性を誇る腸管出血性大腸菌O157である。この病原体は極めて強力なベロ毒素を産生し、わずか数十個の菌が体内に侵入するだけで、人間の健康な腸管を破壊する。
特に小児や高齢者が感染した場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症といった致死的な合併症を引き起こすリスクが飛躍的に高まる。牛肉の表面に付着した菌は、通常の保管状態では容易に増殖しないものの、調理工程におけるトリミング(表面削ぎ落とし)が不完全であれば、生肉の細切り作業によって肉全体へ一瞬にして拡散してしまうのだ。