この潮流を受け、文芸出版業界でも自由律俳句に関連する書籍の復刊や新装版の刊行が相次いでいる。古典的名著が新たな装幀で書店の目立つ棚に並び、現代作家によるアンソロジーが好調なセールスを記録している。
普及のインフラとして見逃せないのがデジタルの存在だ。著作権の切れた名作を無料で閲覧できる青空文庫は、山頭火や放哉の全句を手軽に検索し、味わうための強力な入り口として機能している。さらに、放哉の生涯を描いたドラマやドキュメンタリーがNHKオンデマンドなどを通じてアーカイブ配信され、テキストだけでなく映像や音声を通じた再評価の輪が広がった。
また、日本ペンクラブをはじめとする文筆家たちの間でも、非定型の表現が持つ公共性や、個人の自由な思索を守る器としての短詩型文学の価値が議論されている。デジタル空間での拡散性と、紙の書籍が持つ手触り。その双方が作用し合い、自由律俳句は過去の遺産から生きた表現へと完全に息を吹き返した。