物語の起点となるのは、路地裏でひっそりと営業を続けていた古書店「夏木書店」です。店主である祖父が突然他界したことで、高校生の夏木林太郎は深い喪失感に包まれます。林太郎は両親がおらず、唯一の肉親だった祖父を失ったショックから学校にも通わず、本で埋め尽くされた店内に引きこもる日々を送っていました。
遠方に住む親切な叔母に引き取られることが決まり、蔵書の整理と店の閉店準備を進めていたある日、店の奥から緑色の瞳を持ったトラジマの猫「トラ」が現れます。驚くべきことに、その猫は人間の言葉を流暢に操り、林太郎に向かってこう告げました。「お前の力を貸してほしい。本を救うために」。
林太郎を取り巻く人間関係はシンプルでありながら、それぞれが重要な役割を担っています。
【主要登場人物と相関図】
・夏木林太郎(なつき りんたろう):主人公。豊富な読書量と鋭い洞察力を持つが、内向的で自己主張が苦手な高校生。
・トラ:林太郎の前に現れた人間の言葉を話すトラジマの猫。尊大な口調だが林太郎の導き手となる。
・柚木サヨ(ゆずき さよ):林太郎のクラスの学級委員長。不登校の林太郎を心配して夏木書店を訪ねる、行動力あふれる少女。
・祖父:夏木書店の元店主。林太郎に本を愛する心と深い知恵を授けた精神的支柱。
・叔母:祖父の他界後、身寄りのなくなった林太郎を温かく迎え入れようとする保護者。
戸惑う林太郎をよそに、トラは彼を現実世界の裏側に広がる「迷宮」へと連れ出します。そこには、歪んだ形で本を扱っている人間たちと、囚われた無数の書物たちが待ち受けていました。林太郎は持ち前の知識と思索の力だけを武器に、奇妙な救出劇へと巻き込まれていきます。