ネット上のコミュニティサイトやSNS、医療相談窓口を調査すると、心電図判定に対する生活者のリアルな混乱と不安が浮き彫りになります。
大手知恵袋や掲示板には、「会社の健診でB判定(要経過観察)と書かれ、怖くて大好きなランニングをやめてしまった」「ネットで調べたら心筋梗塞の前兆と書かれていて夜も眠れない」という切実な投稿が溢れています。中には、生命保険の新規加入や住宅ローン(団信)の審査で心電図異常を告知した結果、「条件付き承諾」や「再検査指示」となり、人生設計に思わぬブレーキがかかったと嘆く声も散見されます。
しかし、実際の循環器外来の現場で医師が下す判断は、受診者の焦りとは対照的に極めて冷静です。都内の心臓専門クリニックで日々診療にあたる担当医は、取材に対して次のように現場の温度差を語ります。
「毎年4月から6月の健診シーズンを過ぎると、『心電図でブロックと言われた』と青ざめて来院される患者さんが急増します。しかし、過去数年分の心電図記録を照合し、心エコーで弁膜症や心筋症がないことを確認できれば、9割以上の方は『治療の必要はありません。安心して普段通りの生活を送ってください』とお伝えして診察を終えます。言葉の響きが『心臓のブロック=停止』を連想させるため、必要以上の恐怖を生んでしまっているのが現状です」
「ブロック」という医療用語が与える破壊的なインパクトと、病理学的な実態との間には巨大な認識の乖離が生じています。このギャップこそが、ネット上の不確かな情報に翻弄される受診者を量産している元凶と言えます。