企業の買収や事業承継の現場において、会社の値段を決める企業価値評価(バリュエーション)でも簿価は中核的な指標として使われます。その代表格が簿価純資産法です。
簿価純資産法とは、貸借対照表上の資産合計から負債合計を差し引いた「純資産の簿価」をそのまま企業価値とみなす算出アプローチです。帳簿から直接数字を拾えるため客観性が高く計算も容易な反面、ブランド力や特許技術、将来の成長力といった「目に見えない無形資産(のれん)」が一切反映されない欠点を抱えています。そのため、実務では各資産・負債を時価で洗い替える「時価純資産法」と併用されるのが一般的です。
株式市場では、企業の解散価値を示す純資産の簿価と、市場の評価である時価総額との関係性が厳しく監視されています。株価が1株当たり純資産(BPS)を下回る状態、いわゆる「簿価割れ(PBR1倍割れ)」には重大なデメリットが存在します。
・会社を今すぐ解散して資産を分配した方が価値が高いと市場から判断されている屈辱的な状態
・東京証券取引所による資本効率改善の要請対象となり、経営陣への説明責任や改善圧力が高まる
・時価総額が純資産価値を下回るため、アクティビスト(物言う株主)からの買収攻勢や敵対的買収の標的になりやすい
簿価を過信することなく、市場の時価評価とどう向き合うかは、現代の経営陣にとって生命線となっています。