BOØWYが残した足跡は、単なる80年代のヒットバンドという枠組みには収まりません。彼らが提示したスタイルは、日本のポピュラー音楽における「ロックの構造そのもの」を根底から書き換えました。
音楽社会学的な見地から分析すると、1980年代半ばの日本はフォークソング的な内省や湿り気を帯びた歌謡曲から、都市型のドライでスピード感あふれるカルチャーへと急激にシフトしていた時代でした。BOØWYが鳴らした「縦ノリ」のタイトな8ビートは、バブル経済前夜の都市空間のスピード感と見事に同期し、若者たちの身体感覚を直撃したのです。
その中心にあったのが、氷室京介の圧倒的なボーカリゼーションと布袋寅泰の革新的なギターワークの緊張関係です。
氷室は、従来の日本語ロックが抱えていた「リズムへの乗りにくさ」を、独特の母音の処理と英語的なアタック感によって解消しました。マイクスタンドを操る身のこなし、シャープなシルエット、吐き捨てるような色気のある歌唱は、ひとつの完成されたボーカリスト像を確立しました。
一方の布袋は、ブルースを基調とした泥臭い従来のギタースタイルを排し、デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックといったUKニューウェイヴ直系の知的なカッティング、空間を切り裂くようなエフェクト使いを導入しました。「ギターでリズムとメロディを同時に構築する」という布袋のメソッドは、現在活躍するプロギタリストたちの基礎教養となっています。