全米でも僅か100名程度しか存在しないアメリカ法人類学委員会(ABFA)の公認外交官という肩書は、伊達ではない。彼女が提示する遺体の損傷パターンや骨の変色、死後経過時間の割り出しといったデータは、すべて実際の法医学的知見に基づいている。
「読者は本物を見抜きます」。この妥協なき姿勢こそが、彼女を凡多なサスペンス作家から隔てる決定的な一線を画している。凶器の種類を特定する鋭利なカットマークの解析、水中で風化した骨の特定など、極限の科学的データが物語のトリックと複雑に絡み合う。クライム・サスペンスとしての快感と、本物の科学捜査の知的好奇心が同時に満たされる贅沢な体験がそこにある。