世界の映画史にその名を刻む日本映画の傑作『HANA-BI』でベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞した際も、世界中のメディアが称賛したのは監督・主演を務めた北野武の異彩を放つ才能だった。しかし、その圧倒的な創作活動の裏には、家庭という絶対的な安息の地を守り続けた幹子の影の功績があったことは紛れもない事実である。
近年のNetflixオリジナル映画『浅草キッド』の世界的ヒットにより、昭和のお笑い界や浅草の熱気、そして若き日のビートたけしの生き様が再び脚光を浴びた。映画やドラマで描かれる激動の青年期、その泥臭くも愛おしい日々の傍らには常に幹子の温かな眼差しが存在していた。彼が表現者として極限まで尖り続けることができたのは、彼女という盤石な土台があったからこそなのだ。