神の子池の景観をいっそう神秘的に演出しているのが、水底に幾重にも重なり合う巨大な倒木群です。通常の河川や湖沼であれば、倒木は数年から十数年でバクテリアや菌類、水生昆虫によって分解され、朽ち果てて泥へと還ります。しかし、神の子池の倒木は、まるで昨日沈んだかのように樹皮や枝の質感を残したまま、化石のような状態で水中にとどまっています。
この「倒木が腐らない理由」の核心は、池の水温にあります。神の子池の水温は年間を通して約8度と極めて低く、真夏であっても真冬であってもほぼ一定に保たれています。木材の腐敗を進行させる木材腐朽菌や好気性バクテリアは、水温が15度〜30度前後の環境で最も活発に活動します。8度という冷蔵庫のチルド室に近い極低温環境下では、微生物の代謝と増殖が著しく抑制されるため、分解プロセスが通常の自然界と比較して極端に遅延するのです。
加えて、池の湧水は常に流動しており、酸素は豊富であるものの、有機物分解を促す土壌性細菌が定着しにくい環境が維持されています。倒木の間を縫うように泳ぐのは、北海道固有の淡水魚であり朱色の斑点が美しい「オショロコマ」です。透明な水、静止した倒木、そして鮮やかな魚のコントラストは、この特殊な水温と水質が生み出した天然のアクアリウムと呼べる光景です。