メディアで笑顔を見せるドクさんですが、現在の健康状態は決して楽観視できるものではありません。分離手術では1組しかなかった骨盤と生殖器、泌尿器系を分けたため、ドクさんの体内構造には先天的な負荷が集中しています。
一本の脚と義足で全身を支え続けてきたことによる脊椎の湾曲、骨盤の歪み、さらには単一の腎臓・尿路系への負担から、慢性的な感染症や激しい腰痛・腹痛に日常的に悩まされています。過去には腸閉塞や腎臓機能の悪化で緊急入院・手術を受けたことも一度や二度ではありません。現地関係者の証言によると、公の場に出席する際も鎮痛剤を手放せない日があるなど、常に身体の軋みと向き合いながらの生活が続いています。
こうした状況下、日本のネット空間やSNS上では時折、根拠のない誤解や過激な憶測が散見されます。
代表的な誤解が「日本の莫大な支援金で富豪のような暮らしをしているのではないか」という穿った見方です。しかし実際の現実は全く異なります。ドクさんの主な収入は病院事務や平和活動に伴う謝金、支援基金からの限定的な手当であり、自身と家族の高額な医療費・教育費を賄うだけで家計は常にギリギリの状態です。一時期は生活費を補うために飲食店ビジネスに挑戦したものの、経済不況の煽りを受けて撤退を余儀なくされるなど、生活苦に直面した時期もありました。
また、「枯葉剤の影響は完全に解決した過去の歴史」と捉える風潮も根強いですが、これも明らかな誤認です。ドクさん本人の後遺症は今も進行形であり、ベトナム現地には今なおダイオキシンの遺伝的影響に苦しむ第3世代・第4世代の子どもたちが数万人規模で存在しています。ドクさんが痛みをこらえて表舞台に立ち続けるのは、自分たちの姿を通じて、戦争の真の恐ろしさを世界に警告し続けるためなのです。