当時のサッカーコミュニティ(2ちゃんねる等の大型掲示板や黎明期のTwitter、Yahoo!知恵袋)では、ファンの間でも激しい論争が巻き起こっていました。
「中村俊輔の芸術的な左足こそが日本代表のアイデンティティ」と主張する伝統的ファン層と、「本田圭佑のような世界基準のメンタリティとフィジカルがなければW杯で勝てない」と支持する新世代ファン層による二項対立です。メディア側も視聴率やPV獲得のため、二人の視線やピッチ外での距離感をクローズアップし、「確執劇」として過剰に演出しました。
現場を取材していたスポーツ紙記者たちの回顧録によると、ロッカールームで殴り合いのような衝突が起きた事実は一切存在せず、両者は互いに一定のパーソナルスペースを保ちながらも、戦術的な意見交換を論理的に行っていました。外野が作り上げた「犬猿の仲」という物語と、ピッチ上の当事者たちが共有していた「健全な競争意識」の間には、大きな隔たりが存在していたのです。