本格手打そば本家原の暖簾をくぐる食通たちが一様に驚嘆するのは、一口目に広がる圧倒的な穀物の芳香です。この香りの強さを支えているのが、手打ち蕎麦における蕎麦粉への妥協なきこだわりに他なりません。
同店では、その時期に最も状態の良い国内契約農家から玄蕎麦を厳選して仕入れ、熱を持たせないよう低速回転の石臼でじっくりと製粉しています。蕎麦の風味は熱に極めて弱く、製粉時のわずかな摩擦熱でも香りが揮発してしまいます。職人は日々の気温や湿度、粉の含水率を指先の感覚で見極め、加水量をミリ単位で微調整しながら水回しと捏ねを行います。
蕎麦の醍醐味を語る上で欠かせないのが、十割そばと二八そばの違いです。一般的に二八そばは滑らかな喉ごしと適度な弾力が魅力ですが、本家原の手打ち蕎麦は、つなぎの割合を最小限に抑えつつも、一本一本のエッジ(角)が美しく立った見事な麺線を実現しています。噛みしめた瞬間に弾ける力強い弾力と、喉を通り抜ける爽快感の共存こそが、長年通い詰める蕎麦通を唸らせる最大の要因です。