四兄弟の頂点に立つラオウと、伝承者に選ばれたケンシロウ。この二人の対立は、まさに「覇道」と「王道」の思想的衝突であった。自らを「拳王」と名乗り、圧倒的な暴力と恐怖によって荒廃した世界に秩序をもたらそうとしたラオウ。対するケンシロウは、愛する者との別れや哀しみを背負うことで北斗神拳の真髄を極めていく。
一見すると純粋な善悪の対峙に見えるが、物語終盤で明かされるのは、ラオウが抱いていた末弟への深い愛と、自らの死をもってケンシロウを最強の伝承者へと導こうとした壮絶な意図だ。「わが生涯に片雲の悔いなし」という伝説的名言とともに昇天したラオウの最期は、単なる敵役の敗北ではなく、一つの時代を創り上げた男の美学の完成であった。