小布施の栗文化を語る上で欠かせないのが、「御三家」と呼ばれる名門の存在だ。栗餡に丸ごとの栗を絡めた名物「栗かの子」を文化年間に創割した株式会社桜井甘精堂は、200年以上にわたり純粋な栗と砂糖のみで作る無添加の製法を守り続けている。
一方、木造建築の美しい店舗で栗おこわを看板料理に掲げる株式会社竹風堂や、モダンな空間づくりと洋のエッセンスを取り入れた株式会社小布施堂など、それぞれが独自の美学を展開する。この地域の和菓子製造業が特異なのは、互いに品質を競い合いながらも、「小布施栗」のブランド価値を町全体で守り抜く強固な連帯感を持っている点にある。伝統を守ることは、決して現状維持ではない。時代の嗜好に合わせて甘さのキレを調整し、保存技術をアップデートし続ける職人たちの矜持がそこにある。