実話を下敷きにした作品が放つ異常な熱量は、丹念な現場検証と当事者への独自取材から生まれる。警察の捜査資料や法廷記録の精読はもちろん、引退した元捜査員、弁護護団、事件関係者の証言を何年もかけて拾い集める執念。そこには、当時のニュース報道では伏せられていた決定的な事実の欠落や、組織防衛のために葬り去られた不都合な真実が眠っている。
事実の羅列では見えてこない、犯行前夜の息遣いや被害者の絶望。制作陣はあえてフィクションという強固な器を使い、報道規制の壁を越えて事件の本質を抉り出す。観客が目撃するのは、脚色されたスリルではない。時代の裂け目に生じた、取り返しのつかない現実の生々しい断面だ。