戦後日本の出版業界において、彼が切り開いたドキュメンタリーの地平はあまりに大きい。大文字の歴史ではなく、無名の兵士や官僚たちの小さな選択の積み重ねこそが時代を動かすという発見。それは後続の書き手たちに決定的な影響を与え、実証的ノンフィクションというジャンルを日本の言論空間に定着させた。
空気に流され、論理的な異論を封殺し、根拠なき楽観論にすがって破局へと突き進む。彼が告発し続けた旧軍の病巣は、形を変えて現代の政治や企業組織の中にも潜み続けている。「戦争を始めるのはいつも老人であり、死ぬのはいつも若者だ」。彼が繰り返し口にした素朴で重い警告は、地政学的な危機が現実味を帯びる今こそ、痛烈なリアリティをもって私たちの胸に突き刺さる。