悲劇の歯車が一気に加速したのは2013年3月。良子さんが横行結腸癌および肺炎のため、57歳という若さで突然この世を去ったことだ。当時22歳だった杏里にとって、唯一無二の精神的支柱を失った打撃は計り知れなかった。
母親の急逝直後から浮上したのが、数千万円から数億円とも噂された遺産相続を巡る問題である。母親が残した都内の不動産や預貯金を手にしたものの、まだ金銭感覚も未成熟だった若き娘に、甘い言葉で群がる大人たちがいた。夜の歓楽街、とりわけホストクラブへの巨額の浪費や、怪しい投資話への関与。遺産はわずか数年で底をつき、彼女は数千万円単位の借金を抱えることになる。母を失った喪失感を埋めるための逃避行が、破滅へのカウントダウンとなった。