2010年、日本のアッパーなサイケデリック・ロックシーンを長年牽引した「ゆらゆら帝国」は突然その歴史に幕を閉じた。理由は「バンドとして完璧な領域に達したから」という清々しいものだった。フロントマンであった坂本がソロ活動へ移行した際、多くのファンはどのようなサウンドが飛び出すのか固唾をのんで見守っていた。
ソロ第一作『幻とのごまかし』で提示されたのは、爆音のディストーションギターではなく、驚くほど風通しの良いファンクやラテン、ボサノヴァの要素を孕んだメロウな音像だった。バンド時代の熱量を内側に閉じ込め、音の「余白」を極限までデザインしたサウンド。この転換こそが、彼の音楽が世界レベルで再評価される決定的なトリガーとなったのだ。