一郎彦の正体は、バケモノではなく人間界(渋谷)に捨てられていた人間の赤ん坊です。渋天街の次期宗師候補として高潔な人徳を誇る猪王山が、人間界の路地裏で遺棄されていた彼を哀れに思い、バケモノの世界へと連れ帰って実の息子として養育しました。
猪王山と一郎彦の間には血の繋がりこそないものの、猪王山自身は我が子として惜しみない愛情を注いでいました。しかし、猪王山は「人間であることを告げれば傷つくのではないか」「バケモノの街で居場所を失うのではないか」と恐れ、一郎彦が人間である事実を秘匿し続けます。結果として、この優しさゆえの秘密が一郎彦の中に拭いがたい違和感を蓄積させ、後戻りのできない悲劇の引き金を引くことになりました。