「ピエンロー」という独特な響きを持つこの鍋料理は、漢字で「扁炉」と表記します。中国の広東語や現地の方言において「鍋料理そのもの」や「平たい鍋を囲む食事」を意味する言葉であり、もともとのルーツは中国広西チワン族自治区の家庭料理にあります。
この素朴な現地料理が日本で広く知れ渡る決定打となったのは、舞台美術家でエッセイストの妹尾河童氏による紹介でした。1990年代に刊行された名著『河童のスケッチブック』の中で、知人の中国留学生から教わった絶品鍋としてイラスト付きで詳細に紹介されたことで、食通や文化人の間で瞬く間に大ブームを巻き起こしました。
日本に定着する過程で、妹尾氏が紹介したスタイルが「本家レシピ」として神格化され、現在でも白菜が旬を迎える冬の風物詩として世代を超えて受け継がれています。