本作の誕生秘話として語り継がれているのが、「日常の偶然からすくい上げられた旋律」という側面です。関係者の証言や当時のインタビューによると、ASKAは意図してヒット曲を狙い澄まして書いたというよりも、ピアノに向かいふと指を走らせた瞬間に、サビのメロディと「はじまりはいつも雨」というフレーズがほぼ同時に降りてきたと語っています。
音楽理論の観点から本作を分析すると、その高度な構築に驚かされます。楽曲の骨格を支えるコード進行には、メジャーとマイナーの境界を曖昧にする「分数コード(オンコード)」が巧みに配されており、これが独特の浮遊感と切なさを演出しています。特に、サビへと向かうブリッジ部分でのテンション・コードの使い方は絶妙で、聴き手の感情を自然な高揚感へと誘います。
アレンジャーである澤近泰輔によるストリングスとピアノを主体としたオーケストレーションも、過度な装飾を排し、ASKAのボーカルの息遣いを最大限に引き立てる引き算の美学が貫かれています。