「あーさーくーらー 元ネタ」を語る上で欠かせないのが、1996年7月クールにフジテレビ「火曜9時」枠でスタートした『ナースのお仕事』です。新人ナース・朝倉いずみが起こす数々の騒動に対し、先輩指導係の尾崎翔子が怒髪天を衝く勢いで叫び、朝倉が「せんぱぁ〜い!」と甲高い声で泣きつく掛け合いは、瞬く間に番組を象徴するキラーコンテンツとなりました。
関係者の回顧録や当時のメイキング特番で明かされた事実によると、初期の決定稿台本には「朝倉!」あるいは「朝倉いずみ!」と通常の表記で書かれていたに過ぎませんでした。しかし、舞台出身で抜群の声量とリズム感を誇る松下由樹の卓越した表現力と、天真爛漫なキャラクターを見事に体現した観月ありさのリアクションが現場で噛みあうにつれ、徐々に母音が引き伸ばされ、あの独特のビブラートを帯びた「あーさーくーらー!」へと進化を遂げたのです。
メガホンを取った演出陣も二人のアドリブ混じりのテンポ感を絶賛し、テイクを重ねるごとにデフォルメを要求。単なる「叱責」を極上のエンターテインメントへと昇華させたこのコール&レスポンスは、計算された脚本と役者陣の野生の勘が融合した、テレビドラマ黄金期ならではの産物でした。